ヘブル語聖書を原文で読み始めると、翻訳では気づけない新しい世界が現れます。それは語彙や文法にとどまらず、文字の並びそのものにも意味があり、ときには神学的な意味合いすら帯びています。その代表例がアクロスティック、つまりアルファベット詩です。

ヘブル語のアルファベットは全部で22文字あり、アレフからタウまで続きます。ですから、本来のアクロスティック詩はタウで終わるはずです。英語でいえば、AからZまで並ぶようなものです。ところが聖書のアクロスティック詩をよく見ると、意外な現象が何度も起きます。タウで終わらない詩があったり、文字の順序が逆転していたり、途中でアルファベットの構造自体が崩れてしまう詩もあります。

これらを単なる形式のミスだと見ることもできますが、実はその「ずれ」にこそ、テキストの歴史や詩人の意図、そして編集者による神学的な関心が表れている可能性があります。とくにペイ(פ)という文字は、不思議なほど重要な場面に何度も登場します。

1.詩篇34篇の謎 — タウで終わるはずのその先へ  

詩篇34篇はアクロスティック詩としてきちんと進み、読者はアレフから順に読み進めて最後のタウに到達します。普通ならそこで詩は終わるはずですが、実際にはタウ節の後にもう一節が追加されています。そして、その節はペイで始まっています。

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ヘブル語聖書には、「なぜここでペイなのか」という小さな違和感から見えてくる世界があります。この続きでは、詩篇・哀歌・ナホム書に現れるアクロスティックの謎を、原文に即してさらに考察しています。

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